北欧文化を伝える「a quiet day」
誌面に綴られた言葉や写真が心の糧となる……

クリエイターたちの視点を探る旅へ

 「a quiet day」は、北欧が一つのコンセプトではあるものの、ただ単に北欧の方たちのライフスタイルを紹介するものではなく、ましてやガイドブック的なものでは全くない。

 編集長である岩井謙介さんが自ら北欧の地に出向き、そこで活動するさまざまな分野のクリエイターとコミュニケーションをはかりながら、彼ら彼女らの思考や仕事への捉え方、さらには社会に対する姿勢などをインタビューし、リアルな言葉で綴るインディペンデントマガジンだ。

取材先のほとんどはこれまで紹介してきたクリエイターの繋がりから見つかるそうだ。インタビューではクリエイティビティな世界を生き抜くクリエイターたちの頭の中を覗き込んでいるような感覚になる。

最新号のテーマは「dialogue(対話)」

 2020年10月に発行された最新号の誌面には、デンマークの陶芸家のアンヌ・ブラックを筆頭に、アートやクラフト、デザイン、エディター、ギャラリーオーナーなどの多彩な面々が登場する。

 クリエイターたちはまず自己紹介をし、その後は岩井さんとの言葉のキャッチボール(対話)を楽しむかのように、己とそれ以外の人やモノ・コトとの関係性について、真摯に語りかけてくる。それは画一的で表面的なものではなく、ものごとの本質を捉えたアウトプットとして。

「対話することで得られる効果って何だろう?」
「本音を引き出すために心がけていることは?」
「未来のメディアについてどう考えている?」
「あなたにとって愛とはどういうことなのか?」
・・・・・・。

 年齢や職業、生き方も異なる彼らの答えは実にさまざまだ。そして、読み手である私たちも決して同じ環境ではないのに、そこでクリエイターたちが発する言葉はときに私たちの気持ちをラクにし、次の一歩に進めと後押しするかのように心に響く。それくらい彼ら、彼女らの言葉には強いメッセージが込められているように思う。

 「a quiet dayで一番伝えたいのは、『自分に立ち返る時間を作ってほしい』ということです。誌面では、僕らが質問した内容に答える形でクリエイターたちの想いが綴られていますが、実は読者の皆さんにも同じようにその問いについて考えてみてほしいと思っています。今の世の中、自分に立ち返る時間を持つことはとても大事なことです。そこを顧みずに放棄してしまうと心が疲れたり、悩んだりするのだと思う」とは、編集長・岩井さんの言葉だ。

北欧の美しい光を纏った写真も魅力の一つ。編集長である岩井さんが自らシャッターを切るその写真には、北欧の地に暮らす人々のなにげない日常が写しだされている。

 前号からスタートした「THE COMPASS」では、日本国内で活躍するクリエイターにフォーカスをあて、ものづくりの背景にある物事の考え方や姿勢を紹介している。

 最新号では、群馬県桐生市を拠点に活動するファッションデザイナー、門井理緒さんのものづくりに対する姿勢や、移住を切り口に生き方についてインタビューされているほか、“織物の街”として発展してきた桐生のものづくりの背景が丁寧に綴られている。

北欧だけではなく、日本のものづくりにもフィーチャーした「THE COMPASS」。今後、a quiet dayを軸に日本と北欧のクリエイターたちのコラボレーションも夢ではない。

 a quiet dayは時間をかけて読むべきマガジンだ。

 なぜなら、北欧の光が宿る美しい写真とクリエイターたちの熱い想いが、ページをめくるたびに心地いい充実感と程よい刺激を与えてくれるから。おそらく、その独特の世界観は岩井さんが魅せられた北欧の空気感そのものなのかもしれない。

Information

「a quiet day」ISSUE 2020 October ¥2,200

発行:a quiet day
Web:https://aquietday.jp/
Instagram: @aquietday

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