「a quiet day」ep2
“ものが生み出される背景の考え方や視点を伝える”

photo by a quiet day

彼らが伝えるのは“北欧の雰囲気”ではない

 2020年10月に発売した最新号のテーマは「dialogue(対話)」。このようなご時世では「dialogue(対話)」の必要性をひしひしと感じる。

「毎号掲げているテーマは、前号の中にヒントがあったり、取材したクリエイターが投げかけてくる言葉や問いから発想したり。また、北欧という異国の地で日本人として何ができるだろうと自問していく中で見つかることもあります。たとえば、それが今の日本人に足りないことであったり、軌道修正したほうがいいと思うことや毎日の生活がもっと楽しく快適になるために必要なことだったりを探しています」

 すでに12号目を発行した今、創刊号から変わらない確固としたこだわりがある一方、インディペンデントマガジンだからこその柔軟さもa quiet dayの魅力だ。たとえば、3号ごとに変わる判型や表紙のデザイン。前号からは北欧だけではなく、日本のクリエイターたちにもスポットをあてる企画もスタートした。

「北欧の方たちだけを紹介していると、どうしても『北欧が好きなんでしょう?』といわれることが多くて(笑)。確かにそう思われても仕方がないのですが、それだけではなく、ものが生み出される背景の考え方や視点ということを感じてほしかったので、日本のクリエイターたちにもフォーカスを当て始めました。
 実際に話を聞いてみると、これまで取材してきた北欧のクリエイターと同じようなことを話している方が多くて、改めて、ものづくりの背景にある考え方に国境はないんだなと気づかされました」

 今でこそ、コロナ禍でなかなか難しいが、これまで取材した北欧のクリエイターたちが来日すると、編集長である岩井さん自ら産地を案内し、インスピレーションを育んだり。また、異なるジャンルのクリエイター同士をつなげることで新たなプロダクトを制作したりと、a quiet dayをきっかけとした取り組みは国をまたいで広がっているそうだ。

2021年は使い手と作り手が繋がる新たな場づくりを目指す

photo by a quiet day

 今年、岩井さんは新たな局面を迎えた。それは祖父母が住んでいた長野県上田市への移住だ。2021年の目標はこの地で奥さまと一緒に新たにショップを開くことだという。

「数年前から移住に向けていろいろな場所を見てきましたが、その中で空気感が合う場所が子どものころに過ごした上田でした。マガジンを5年間作り続けて、自分が小さいころ、夏休みに帰省していたこの土地で過ごした情景が、北欧を通して感じた憧憬とリンクすることに気づいたんです」

 岩井さんがオープンを予定しているショップは、a quiet dayが目指す「自分自身に立ち返ることができる場」だそう。取り扱うのはa quiet dayを始め、岩井さんご夫妻の審美眼に叶った本だったり、クラフトだったり、アートだったり。これまではオンライン販売のみだったのが、実際に手に取って質感や佇まい、使い勝手を見てもらえる場所ができることになる。

「僕がa quiet dayで一番伝えたいことは、豊かさを決めるのは、結局、自分自身なので、自分のテンポというか、自分自身に立ち返る時間を作ってほしいということです。
 マガジンに関しても、以前、版型を小さくして持ち歩けるようにしたらという話もあったのですが、僕は満員電車の中でこのマガジンを読むシーンが浮かばなかった。自宅でゆっくりと読んでほしいと思ったんです。このサイズのマガジンを開いて読むには、それこそ自分の時間がないとできません。このマガジンを手にとった方がその時間を持って、自分自身と向き合えることができたらうれしい。
 そして、今度はそういうきっかけとなるリアルな場所を作りたい。作り手と使い手の繋がりが見える場所ができたら面白いなと思いますね。今は少し難しいけれど、いつか北欧のクリエイターたちも来て、この場で会話が弾んで新しいものづくりが始まったら、こんなうれしいことはないですね」

表現の場は雑誌のみならず……

 まだまだコロナの終息が見えない今、北欧に行くことさえも難しい状況が続くことから、次号の発行は少しペースを落としていくと岩井さんは話す。しかし、無理やりにでも作らなくてはいけないものでもない。それがインディペンデントマガジンのよさでもある。

「そこは世の中の情勢をみながら考えていこうと思います。それよりも、今年はショップづくりを優先したいし、これからはa quiet dayの読者の方やプロダクトを手にとってくださる方との関係性をもっと密にしていきたい。
 その一環として、昨年からニュースレターを送ったり、Padcastで『quiet radio』を配信しています。この間もニュースレターにいただいたお手紙のお返事を『quiet radio』で紹介したりして、今、僕はこの相互交流できる気持ちのいい関係性をずっと続けていくためにどうしたらいいのかなと考えています。もちろん、マガジンが核であることは変わりないのですが、表現の方法や出版のタイミングにはそれほどこだわってはいないんです」

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Information

Web:https://aquietday.jp/
Instagram: @aquietday
Twitter:@aquietday_jp

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